「広報・PR活動のKPI設定をどうすればよいかわからない」と多くの広報担当者の方から伺います。それもそのはず、広報・PR活動の効果は中長期的に表れることが多く、また、売上などへの直接的な効果を測りにくいため、広告施策や営業活動と比べて活動の成果をKPIに反映することが難しいからです。しかし、広報・PR活動による事業への貢献について経営層や他部署から理解を得るには、目標達成のための重要な指標であるKPIを設定し、効果測定をおこなうことが欠かせません。本記事では、約20年にわたって数百社のPRの支援・KPI設定に携わってきた当社のノウハウを元に、広報・PRにおける正しいKPI設定方法を解説します。
KPIとは、「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」のこと。目標に対する達成度合いを評価するための指標です。そして、KPIとセットで語られることが多いのがKGI。KGIは、「重要業績達成指標(Key Goal Indicator)」のこと。KPIが業務レベルでの目標達成指標であるのに対し、KGIは組織全体として目指すべき目標を指します。
広報・PR活動においても、KPIを正しく設定して効果測定をおこなうことが重要です。なぜなら、活動の継続的な改善や、成功した施策の再現性向上に役立てられるからです。しかし、「広報・PR活動のKPIの設定方法がわからない」「掲載数や広告換算をKPIにしているが正しいかわからない」「効果測定のやり方がわからない」といったお悩みも少なくありません。
こうしたお悩みは、広告施策や営業活動に比べて広報・PR活動が、事業や経営に対する貢献効果を測りにくいことが原因です。広報・PR活動は、売上や集客効果のような直接的な効果の計測が難しい傾向があり、どの指標をKPIに設定するのが適切なのか悩んでしまうケースが多いようです。
一方、コロナ禍の影響で、あらゆる業務手法がデジタルに大きくシフトしています。テレワークの普及に伴って成果主義が浸透しはじめており、生産性や効率性を数値化して経営判断に活用する動きが加速しています。広報・PR活動においても、上層部から「成果の可視化」を求められる場面は、今後ますます増えていくでしょう。このような背景から、今後は広報・PR活動も適切なKPI設定をおこない、活動の改善や経営へのレポーティングに活用することが、さらに必要不可欠になっていくと考えられます。
では、一体どのように広報・PR活動のKPIの設定をおこなうのが適切なのでしょうか。ここからはKPIの設定について抑えるべき3つのポイントについて解説します。
広報・PR活動は、成熟度のフェーズに応じて変化させることが必要です。フェーズによって目指すべき目標が異なるため、対応する形で広報・PR活動のKPIとして設定するべき指標も変化させます。自社の広報・PRが下記の4種類のどこに位置するかを見極めたうえで、KPI設定をおこないましょう。
広報・PR活動の方針策定、必要な素材、メディアリストなどを準備している段階。
このフェーズでは、これから実際に広報・PR活動をおこなっていくにあたって、インフラを整備したり、露出先を開拓したりすることが目標になります。
多様な素材・テーマで自社の情報を多角的に発信していく段階。
定期的にプレスリリースを出すなどして、露出を増やしていくことが目標になります。
このフェーズでは、「メディア掲載数」や「広告換算費」などのアウトプット指標を中心としたKPI設定をおこないます。
重点媒体・記事内容・テーマなどを意識し、発信の質を向上していく段階。
読者層が多い媒体、自社のイメージにマッチする媒体、好意的な取り上げ方をしてくれる媒体など、重点媒体に対する働きかけを強化して、ポジティブな論調を世間に波及していくことが目標になります。
このフェーズでは、消費者にどのような行動変容があったのかが重要になるため、「サイトPV/UU数」「指名検索数」といったアウトカム指標に注目します。
メディア記事やSNS、オウンド、ペイドといったSOEPメディアを連携し、ブランドを醸成する段階。さまざまなメディアを統合的に活用して、多様な情報を社会に波及していくことが目標になります。
このフェーズでは、競合との差別化や、エンゲージメント率の向上などに力を入れていくことになります。
自社のポジション、広報・PR活動の対象となる商品やサービスがどのフェーズにあるのかを意識すると、力を入れるべき活動やKPIの指標も明確になります。フェーズが進んだら、KPIも適宜見直しましょう。
KGI(組織全体として達成すべき目標)を理解せずに、効果的なKPI(業務レベルでの評価指標)を設定することはできません。まずは、企業の経営課題や中長期計画から、広報・PR部門として目指すべきゴールを定めてKGIとして設定し、達成するために必要な過程を観測できる指標をKPIとして設定しましょう。
事前に経営層と話し合い、「広報・PR活動の結果、企業としてどのような認知や想起をされたいか」を擦り合わせた上でKGIを設定し、そこから逆算してKPIを設定していくことをおすすめします。こうすることで経営層に活動の成果を報告する際も、理解を得やすくなります。
広報・PR活動の効果測定は、組織や事業の課題や目的によって用いるべきKPIの指標が異なります。
指標には分類として「アクション指標」「アウトプット指標」「アウトカム指標」の3種類があり、これらを組み合わせたKPIを設定することが大切です。まずはそれぞれの指標の内容について理解しましょう。
自分たちが情報をどれだけ発信したのかを示すのがアクション(活動)指標です。
「プレスリリース配信数」「プレスリリース回答率」「取材申込数」「配信リスト数」などが挙げられます。
発信した情報が社会にどれだけ露出・波及したのかを示すのがアウトプット(露出)指標です。
「掲載件数」「広告換算費」「重点媒体掲載率」「リーチ数」などが挙げられます。
波及した露出を見て人や社会がどう動き、経営や事業に影響を与えたのかを示すのがアウトカム(貢献)指標です。
「売上」や「集客効果」の他、「サイトPV/UU数」「指名検索数」「ブランド認知率」「ブランド好意度」などが挙げられます。
広報・PR活動の成果を総合的に評価するためには、3種類の指標を組み合わせてKPIを設定し、計測・評価していくことが重要です。指標を組み合わせてKPI設計をすることで3種類の指標どうしの関連性が可視化され、課題がどこにあるのかを把握しやすくなります。
ここからは、当社に寄せられるKPI設定の「お悩み」に着目して、KPI設定のポイントをご紹介します。
A. ここまで解説してきたように、広報・PR活動は、フェーズによって追うべきゴールが異なります。たとえば、競合と比べてもメディア掲載数が十分に出ているのであれば、広報・PR活動の目標は、「量の強化」ではなく、メディア掲載によって消費者の行動変容を促す「質の強化」が目標として適切です。「メディア掲載件数」や「広告換算費」の去年比増を目指すよりも、「サイトPV/UU数」「検索エンジンでの指名検索数」などのKPIに着目して、消費者の行動変容や改善を図ることが重要だといえます。単純に去年比増を目標にすると、リソース的に苦しかったり、効率が悪くなったりすることもあるため、KPIも状況に合わせて変化させていく必要があります。
広報・PR活動のコミュニケーション戦略として、なぜ他の数値が重要なのか理解を得るためには、まずは自社の広報・PRフェーズと目標を整理したうえで、経営層とよく話し合うことが大切です。最終的なゴールはどこを目指すのか、どのように企業活動に貢献するのかも含めて説明することが求められます。それでも理解が得られない場合は、経営層が求めるKPIと、広報・PR部門として設定したKPIの両方を追うのもひとつの方法です。継続的に計測してデータが蓄積されると、それぞれのKPIの変動に関連性や法則を発見できることも考えられます。
A. KPIは、計測したデータを定期的に振り返り、改善や見直しに活用することが重要です。KPIの効果測定の結果を使って、計画→実行→評価→改善というPDCAサイクルを回していくことが、目標達成というゴールへの近道です。少なくとも数カ月間は同じKPIの計測を継続し、月次や週次で過去のデータと比較して分析をおこないます。KPIの測定結果から、良かった点は再現を目指し、反省点は新たなトライに活かすという使い方が有効です。
効果測定を続けていくと、「こういうリリースが出たときは、売上が上がるようだ」など、アウトカム指標とKGIとを絡めた考察なども得られる場合があります。成功パターンの再現性や、売上貢献につながる広報・PR活動を意識していことで、より効率的な広報・PRの手法を見つけやすくなるでしょう。
広報・PR活動のKPI設定は、自社のフェーズに合わせて、適切な指標を選択することが肝心です。KPIの測定結果を元に継続的に分析をおこない、次の広報・PR活動の改善に活かしていきましょう。また、経営層や上層部とも連携し、KPI設計や報告を通して「広報・PR活動がどのように経営や事業に貢献しているか」を理解してもらうことが、広報・PR部門の評価につながります。
それでもKPI設定に迷ったときは、まず他社の広報・PR活動でよく使われているKPIの指標で計測を取り組み、継続的に変化を見ていくことから始めていただくのがおすすめです。
ビルコムがご提供する広報・PR活動の効果測定ツール『PR Analyzer』では、さまざまなKPIの指標を自動的に算出できるため、データ収集の手間を省き、分析や考察に注力していただけます。
競合との比較や、時系列での比較も可能なので、KPIの分析と合わせて活用いただくことで経営層への報告も説得力が増すでしょう。
既に日本航空、ニューバランス、ヤマハ、メルカリ等の大手・成長企業を中心に既に150社以上にPR Analyzerを導入、活用をいただいています。PR Analyzer®の導入事例はこちら
また、ビルコムでは、広報・PR活動のKPI設定や効果測定に関するさまざまなセミナーや最新情報、ノウハウをまとめたeBookも各種ご用意していますので、広報・PR活動の分析や改善を進めるヒントとしてお役立てください。
その他、広報・PR活動やKPI設定に関するご質問がございましたら、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。
ビルコム株式会社
代表取締役兼CEO 太田 滋
2003年にビルコム株式会社を創業。市場創造と評判形成に貢献する次世代PRを掲げ、マスメディアのみならずWebやSNSを含めた統合的なコミュニケーション戦略を手掛ける。2009年には、クチコミマーケティングの健全なる育成・啓発を支援するWOMマーケティング協議会を立ち上げ初代理事長を務めるなど、業界の発展に貢献している。
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