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2021年10月27日
PRノウハウ

広報・PRの効果測定はどう行うべき?効果測定の課題・解決のポイントを紹介

広報・PR活動は、広告などとは異なり、その成果を示しにくいもの。それでも出社していれば、メディアへの取材対応など、上司や他部署からも活動の様子がうかがえて評価することも可能でした。しかし、コロナ禍によりリモートワークが浸透したいま、広報担当者は、より具体的な成果が求められるようになってきています。

また、広告が身の回りに溢れる現代において、第三者から企業価値を発信してもらえる広報・PR活動の重要性は、より高まってきていると言えるでしょう。

正しい成果を報告し、広報・PR活動の重要性を示すためにも、効果測定は欠かせません。今回は広報・PR活動の効果測定の具体的な手法や考え方についてご紹介します。

広報・PR活動に効果測定は必要か?

自社のブランド価値の向上や、認知拡大に大きな影響を及ぼす広報・PR活動ですが、その成果は業務の特性上、なかなか示すことが難しいもの。企業にとって重要な業務であるにも関わらず、成果が見えにくいことで、社内で正当な評価が受けられなかったり、予算が降りづらかったり、ということはありませんか?

そうした中で、効果測定を行うことが広報・PR活動による効果の定量的な評価、及び活動の継続的な改善を可能にし、広報・PR活動の価値を明確にします。

プレスリリースを出しただけでは分からない、メディア露出による経営への影響や、SNSでの反響など、さまざまな方面から飛び交う世間の「声」を定量的に評価することができれば、施策の効果を可視化できます。また、自社の活動に対する評価を集め、認知することにもつながるため、施策の内容や方向性をよりよいものへと改善することも可能になります。

そして、広報・PR活動の効果を定量的に示すことで、経営層や他部門にも広報・PR活動の意義をアピールでき、予算の確保などにもよい影響を及ぼすことができるでしょう。

このように広報・PR活動における効果測定は、さらなる施策の改善と、経営への貢献、社内的な評価向上につながる重要な役割を果たします。今後、オンラインでの業務が広まるにつれて、より具体的でより確実な成果が求められることは明らかです。
難しいと言われる広報・PR活動の効果測定ですが、業務の意義を示すためにも、しっかりと行っていきたいですね。

具体的な効果測定方法のポイント

とはいえ、効果測定の難しさは広報・PR担当にとって自明のこと。『第12回企業の広報活動に関する意識実態調査報告書』(経済広報センター調べ、2015年)によると、広報部門の悩みとして「広報活動の効果測定が難しい」と答えた人は、実に約73%にものぼります。


『第12回企業の広報活動に関する意識実態調査報告書』(経済広報センター調べ、2015)
出典:経済広報センター『第12回企業の広報活動に関する意識実態調査報告書』2015年


ROASやCPAなどの指標が定着している広告に比べ、広報・PR活動には一般的な指標が定着していない点も、効果測定を難しくしている要因でしょう。

では、正しく効果測定を行うためには、どのような点に注意すればいいのでしょうか?
ここからは広報・PR活動における効果測定のポイントをご紹介します。

1:アクション指標・アウトプット指標・アウトカム指標を分類する


広報・PR活動の効果測定の指標は、以下の3種類に分類できます。

  • 自分たちが情報をどれだけリリースしたのかを示すアクション(活動)指標
  • リリースした情報が社会にどれだけ波及したのかを示すアウトプット(露出)指標
  • 波及した露出を見て人や社会がどう動き、経営に影響を与えたかを示すアウトカム(貢献)指標


ポイントは3種類の指標それぞれに対し、目標設定及び結果を計測し、評価していくことです。これを実施すると、問題がどこにあるのかが明確になり、広報・PR活動の見直し・改善を行いやすくなります。

2:フェーズごとに指標を立てる


広報・PR活動は、その成熟度においてフェーズが変わってきます。順序としては、広報・PR活動の方針策定を行う基盤構築フェーズ、プレスリリースを定期的に打ち、露出を増やしていく量強化フェーズ、事業や経営へ貢献するために戦略的に情報発信を行う質強化フェーズ、そして自社メディアや他社メディア、SNSなど各メディアと連携し、ブランドを醸成するメディア統合フェーズ、と進んでいきます。

量強化フェーズならば、どれだけメディアに露出できたかが重要な指標となるため、広告換算費などのアウトプット指標が重要になりますが、質強化フェーズでは、読者にどのような行動変容が起こり、経営に貢献する効果が得られたのか、というアウトカム指標が求められます。基盤強化フェーズであれば、プレスリリースの受け手を探すことになるため、新規記者開拓数やメディア訪問数などが指標となりますし、メディア統合フェーズになると、同業他社などとの差別化や、エンゲージメント率の向上などが重要になります。

このように、フェーズに応じて見るべき指標は変わるので、自分たちがいまどのフェーズにいて、どのような成果が求められているかを見極め、適切な指標を立てるようにしましょう。

3:再現性を高める

効果測定を行い、効果の高かった施策が分かったら、それを再現できるようにすることが大切です。掲載件数など結果だけを見るのではなく、なぜ掲載に至ったのか、なぜ高評価だったのか、など調査したデータを元に要因を定性的に分析し、仮説を立てましょう。

もちろん、効果の高い施策についてはそのノウハウを蓄積することも忘れずに。こうして蓄積したノウハウが、広報・PR活動の精度を着実に高めることにつながり、再現性の向上の土台になります。

 

広報・PR活動の効果測定における具体的な指標とは

先述したように広報・PR活動の効果測定は3種類の指標に分類でき、アクション・アウトプット・アウトカムのそれぞれに複数の指標があります。ここからは、効果測定に用いる指標にはどのようなものがあるのかをご紹介します。

広報・PR活動の効果測定では、長らく「広告換算費」という指標が用いられてきました。広告換算費とは、プレスリリースなどが元になり、メディアで取り上げられた記事を、同条件の広告出稿料金に換算して算出した数値です。元来、成果を示しにくい広報・PR活動を「金額」という数値で表示することができるため、長らく用いられてきましたが、近年では欧米を中心に適切な指標かどうか疑問視されています。

国際コミュニケーション測定評価協会(AMEC)で提唱されたPRの効果測定に関する7原則・バルセロナ原則でも「広告換算費はコミュニケーションの価値を測定するものではない」と明記されています。

 バルセロナ原則3.0

(1) ゴールの設定は、コミュニケーションのプランニング、測定、評価に絶対的に必要なものである。

(2) 測定と評価はアウトプット(施策の成果)、アウトカム(目標に対する成果)に加え、潜在的なインパクトを明らかにすべきである。

(3) ステークホルダー、社会、そして組織のために、アウトカムとインパクトを明らかにすべきである。

(4) コミュニケーションの測定と評価は、質と量の両方を含む必要がある。

(5) 広告換算はコミュニケーションの価値を測定するものではない。

(6) 包括的なコミュニケーションの測定と評価には、オンラインとオフラインの両チャネルを含む。

(7) コミュニケーションの測定と評価は、学びとインサイトを導くため、誠実さと透明性に基づくべきである

以上のように、現在の広報・PR活動の効果測定は、広告換算費に代表される「アウトプット」よりも、ブランド認知率や資料請求数のような「アウトカム」が重要視されるようになりはじめています。

とはいえ、正確に効果測定をするためには、アクション・アウトプット・アウトカム、3種類の指標を網羅して計測をするべきでしょう。以下に主な指標を挙げてみます。

 

アクション指標

量的指標

  • プレスリリース配信数
  • メディアリスト数
  • メディア訪問数
  • 新規記者開拓数など

質的指標

  • プレスリリース開封率
  • プレスリリース経由の問い合わせ数
  • 重点メディア訪問数
  • 取材獲得率など

アクション指標は広報・PR活動の行動量を測る指標です。

プレスリリースの配信など、メディアへの露出を増やすためにどれだけ活動したのかを測ります。質的指標では、プレスリリースがどれだけ読まれているか、問い合わせがどれだけ増えたか、という行動変容が指標となります。

 

アウトプット指標

量的指標

  • 記事総掲載数
  • 広告換算費
  • 想定リーチ数
  • SNS投稿数
  • インプレッション数など

質的指標

  • 重点媒体への掲載率
  • ポジティブ記事率
  • SNSシェア数
  • シェアオブボイス
  • エンゲージメント率など

アウトプット指標は、広報・PR活動がどれだけ露出したかを測る指標です。そのため量的指標としては、広告換算費や記事の掲載数などが指標となります。質的指標で言えば、露出先や記事の内容、SNSの反応のうちポジティブなものの比率を測る指標などが多くなります。

 

アウトカム指標

量的指標

  • POSレジデータ
  • 来店来訪データ
  • 新規PV数
  • 資料請求数
  • ランキング/イメージ調査など

質的指標

  • 新規率
  • リピート率
  • 指名検索数
  • 滞在時間/熟読率
  • 従業員エンゲージメント
  • 業界内の評判/口コミなど

アウトカム指標は、企業の経営や、事業への効果などに寄与する、広報・PR活動の中でも重要性の高い指標です。プレスリリースなどが経営へいかに貢献したのかを表すので、プレスリリースを受けて企業やサービスのブランドイメージのアップに貢献しているのか、業界内の評判は上がっているのか、店舗やWebサイトへの来訪の変化、売上への貢献などを測る指標が多くなります。

このように数多くの指標が考えられます。こうした指標を適切に組み合わせて、求める測定結果を導き出していきましょう。

 

広報・PRが抱える課題と解決策

ここまで広報・PRの効果測定のポイントや、指標についてご紹介してきましたが、具体的に企業の広報・PR担当者が抱えているのはどのような課題なのでしょうか?

広報・PR活動の成熟度にフェーズがあるように、課題もフェーズによって異なってきます。自社がどのフェーズにいるのかを確認して、適切な課題解決を図りましょう。

1:現状把握ができていない

広報担当者が最初に直面する壁は、「自分たちの広報・PR活動がいまどのような効果を上げているかを正しく理解できていない」という課題です。まったく効果測定を行っていない、または少ないデータだけで判断を行っているような状態で、効果測定をどう始めていいのかが分からないフェーズです。効果測定に必要なデータが取得できておらず、ツール導入を検討しているフェーズもここにあたります。

まずは、効果測定のために十分なデータを取得する必要があります。効果測定ツールの導入から始めましょう。

2:指標の見方が分からない

効果測定を実施するためにツール導入を決めて、数値が分かったあとに問題になるのがこの課題です。ここまで紹介してきたように、広報・PRの効果測定にはさまざまな指標があり、それらは効果測定の基礎となるもの。しかし、数値を知っているだけでは自分たちの広報・PR活動がどのような効果を上げているかは分かりません。分析手法など、数値の活かし方を学ぶ必要があります。

また、数値は把握しているものの、それが良いのか悪いのかを判断することができないという会社も多いです。その課題の解消には自社だけでなく、競合やベンチマークする企業など比較対象を設定し、数値を把握することで判断しやすくなります。

まずは目的に沿う複数の指標を確認し、効果的に働いている指標と、改善すべき指標を把握することから始めましょう。

 

3:定性的な指標が意識できていない

ある程度、プレスリリースなどのメディア露出数も確保できており、基本的な効果測定が行えているお客さまによく見られる課題です。具体的には、量的な指標は成果を上げているのに、その行動量と世間から自社へのイメージにギャップがある場合です。プレスリリースに対するメディアの論調など、質的な要素を加味できていないと、効果測定の結果と評価にギャップが生まれてしまいます。

正確な効果測定のためには、量的指標と質的指標を組み合わせて考える必要があります。質的指標は数値に表れにくい部分もありますが、その分効果測定の質を高めることにつながるでしょう。

 

4:売上への影響が分からない

広報・PRの効果測定が成熟してくると、社内ではさらなる成果として、売上への寄与が求められるようになってきます。売上への影響を測るためには、広報・PR活動のデータだけではなく、広告や自社メディア運用などのマーケティング、人事、売上などのデータを突き合わせ、因果関係を求める必要があります。

このフェーズでは、部署を超えたデータの共有や調整が発生するため、全社的な協力が必要となります。過去の効果測定における実績を示しつつ、社内の理解を深めましょう。

このように効果測定が抱える課題にもさまざまなフェーズがあります。

多くのお客さまは最初のフェーズでつまずいているものです。大きな企業であればあるほど、人事異動や長年の慣習にとらわれて、実は効果測定がきちんとできていない、という場合がよく見受けられます。

自分たちは正確な効果測定ができているか、まずはその部分からしっかりと見極めていきましょう。

 

効果測定の手法は企業ごとに異なる

広報・PR活動における効果測定はとても重要ですが、「こうすればいい」という確立された手法は実はありません。

それは、これまで述べてきたように、広報・PR活動のフェーズは企業ごとに異なることや、なにを重要視しているのか、という指標がそれぞれの企業で異なっているからです。

これだけでは、広報・PR活動の効果測定はより難しいものに感じてしまうかもしれませんが、要は自社が目指している目標に対して、どれだけ効果を上げられているのかを調べればよいのです。それを求めるために必要な指標は先ほど挙げたとおり、無数にあります。

どの指標を使えば、より目標に近づいているのが分かるのか、いろいろと試しながら自社にピッタリな効果測定手法を確立させていきましょう。

 

効果測定に悩んだら

とはいえ、自社にとって重要な指標はなにか、どんなPR戦略を立てればよいか、など広報・PR活動を行っていく上で、悩みは尽きないもの。ビルコムの提供する効果測定ツール「PR Analyzer」では、さまざまな指標を自動的に算出することができるため、効率的な効果測定・分析の実施にお役立ていただけます。

また、効果測定に関するお悩みをもつ担当者様に向けて、効果測定の方法、施策分析や改善手法の紹介、他社事例など、広報・PR活動に関するさまざまなセミナーを実施しています。その他、効果測定に役立つホワイトペーパーなどもご用意していますので、迷いや不安がある担当者様はぜひご参考ください。

中でも人気No.1のホワイトペーパー資料が、「広報効果測定ハンドブック2024」です。広報・PRにおける効果測定について、設計のポイントをまとめた一冊です。1,500名を超える企業広報担当者様にダウンロードいただいたハンドブックに対して、「運用の手法をもっと知りたい」「具体的な数値設定に悩んでいる」「最新の社会情勢に合わせて効果測定を見直したい」等具体的なお悩みも多く寄せられるようになりました。こうした背景を受けアップデートした資料となります。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
広報・PR 効果測定ハンドブック2024 ダウンロード

また、広報・PRの効果測定に関するご質問やお問い合わせは下記よりお気軽にお寄せください。

監修者

ビルコム株式会社
代表取締役兼CEO 太田 滋

2003年にビルコム株式会社を創業。市場創造と評判形成に貢献する次世代PRを掲げ、マスメディアのみならずWebやSNSを含めた統合的なコミュニケーション戦略を手掛ける。2009年には、クチコミマーケティングの健全なる育成・啓発を支援するWOMマーケティング協議会を立ち上げ初代理事長を務めるなど、業界の発展に貢献している。