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2021年10月25日
PRノウハウ

広告換算費を徹底解説 – 広報・PRの効果測定における適切な使い方

広報・PRの効果測定を行う上で、最もポピュラーな指標として「広告換算費」があります。広報の業務を担当されている方ならば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
今回はこの「広告換算費」について、その意味や役割などを詳しく解説します。

広告換算費とは?

広告換算費とは、広報・PR活動の結果として掲載された記事や、報道された映像の価値を測る参考値です。

広報・PR活動は、その活動の結果がニュースとして、テレビや新聞、雑誌、Webサイトなどのメディアに掲載されます。
その際、記事や映像がユーザーに露出した成果や認知された効果を、そのメディアに広告出稿した時に必要な広告費へと換算します。これによって広報・PR活動の効果を金額として算出したものが広告換算費です。

それでは、広告換算費はどのように算出するのでしょうか?


広告換算費の算出方法

テレビCMの場合

テレビCMの場合、15秒間のスポットCMが基準となります。例えば、広報・PR活動の結果、企業や商品・サービスが夕方のニュース番組で取り上げられ30秒間放送された場合、同時間帯のスポットCMを30秒間流した場合の金額として算出されます。

新聞や雑誌の場合

各媒体の広告出稿料金を基準に算出します。広報・PR活動が新聞や雑誌に掲載された記事面積と同じ面積の広告出稿料金が広告換算費となります。

Webサイトの場合

Webサイトの場合は、業界標準の広告出稿料金などが設定されておらず、単純に計算することはできません。そのため、1つの記事に対して、WebサイトのTOP ページバナーを掲載した際の料金を割り当てることがよくありました。

しかし、そのWebサイト自体の注目度や、ソーシャルメディアへの影響などが考慮されていないため、正当な評価と言えるかは難しい問題です。

また、Webサイトが1日あたりに獲得するページビュー数や掲載コンテンツのジャンル、サイトのドメインパワーやインデックス数なども考慮する必要があります。

 

広告換算費の意義と、変わりゆく効果測定の流れ

広報・PR活動はその成果を数値で表すことが難しい活動です。そのため、定量的に評価することができる広告換算費は長らく効果測定の重要な指標として多くの場所で使われてきました。

効果測定が難しい広報・PR活動において、数値化されている広告換算費は他社との比較や昨対比など、相対的に比較・評価が容易に行え、改善目標を具体的に設定できる、というメリットがあります。

しかし、広告換算費で測ることができるのは、あくまで広報・PR活動による結果の「量」の評価であり、「質」を評価することはできません。また、広告の価値を換算したものではなく、正確には広告にかかる費用=コストに置き換えた数値です。

この広告換算費を広報・PR活動の効果測定の指標として使うのが正しいのか、その是非を問う声が欧米を中心に上がっています。

最も象徴的な出来事は、国際コミュニケーション測定評価協会が2010年に発表したバルセロナ原則です。バルセロナ原則とはPRの効果測定に関する7原則を掲げたもので、広報・PR活動の効果測定におけるグローバルスタンダードとなっている考え方です。このバルセロナ原則では、「広告換算費はコミュニケーションの価値ではない」と明記されています。

広告換算費では、広報・PR活動がユーザーにアクションを起こさせたかどうか、といった価値を測ることはできないというわけです。

このバルセロナ原則以降、広報・PRの効果測定は、どれだけ多くメディアに露出することができたのかという「アウトプット」の指標に加えて、露出した情報を受けて、ユーザーにどのようなアクションを起こさせたのかという影響を見る「アウトカム」の指標も重視されるようになりました。

ちなみに、記事や番組への掲載などの露出具合を広告費に置き換える広告換算費は、まさにアウトプットの代表的な指標と言えるでしょう。


アウトカムを測る評価指標とは

それでは、広告換算費のようなアウトプットではなく、アウトカムで評価するための指標とはいったいどのようなものがあるのでしょうか?

記事の論調調査

好意度調査とも言われています。露出した記事を分析し、その記事が好意的かどうかを定性的に評価します。記事の論調がネガティブな場合、いくら露出できたとしてもネガティブな印象をユーザーに与えてしまいます。記事の論調調査はアウトカムを測る上で重要な指標となってきます。

ソーシャルリスニング

SNS上での広報・PR活動や、製品、企業名などがどのように話題になっているかを調査します。また、広報・PR活動をSNSでも実施している場合、その反応数などを調べ、Web上での注目度や好意度などを評価していきます。広報・PRの効果測定を行う上で、SNSの重要度は非常に高まっています。

店舗や自社Webサイトへの訪問数の推移

広報・PR活動の結果、自社サイトや店舗への訪問数がどれくらい増加したかを調査します。メディア露出の影響力による認知度や魅力の向上度合いを測ることが可能です。

問い合わせや売上の推移

広報・PR活動を行ったあとの問い合わせ数や売上の推移を調べ、具体的にどのようなアクションへとつながったのかを調査します。直接的な企業への貢献度がわかるため、非常に重要な指標となっています。

認知度調査

いわゆるアンケート調査によって、企業の認知度を測ります。世論調査や好感度調査などのようなもので、時間やお金はかかりますが、精度が高く、信頼できる数値と言えるでしょう。

このようにアウトカム指標は、アウトプット指標とは異なり、記事の露出によりユーザーがどのようなアクションを起こし、経営や事業に貢献したかを計測するための指標です。

アウトプット指標と比べ、調査や分析には時間と手間を要しますが、広報・PR活動の質の効果測定を行うためには必要不可欠であり、今後も広報・PR活動の効果測定において、スタンダードな評価指標となっていくでしょう。


広告換算費は古くない!広告換算費を含む効果測定の考え方

先に紹介したバルセロナ原則は、2010年に最初の宣言が発表されてから、2015年、2020年に更新されています。
しかしその中でも、広告換算費について触れた「広告換算はコミュニケーションの価値を測定するものではない」という項目については、変更されることはありませんでした。
では、広告換算費は広報・PRの効果測定において、利用できない指標なのでしょうか?

答えはNOです。バルセロナ原則で否定されているのは「コミュニケーションの価値」として広告換算費を利用することであり、広告換算費そのものを否定しているわけではありません。
考えるべきは広告換算費の使い方なのです。

例えば、相対的な比較に利用する場合、広告換算費は良い指標と言えます。なぜなら、同一の基準で算出した広告換算費を、昨対比など過去のデータと比較する際は、金額という絶対的な数値で表されることで、どれだけ伸びたか、どれだけ落ち込んだのかを明確に判断することができるからです。

そして、広報・PRを担当している部署が情報発信をいかに費用対効果よく行うことができたかが可視化され、社内に広報活動をアピールする点で適した指標と言えます。

ただし、こうしたシーンで広告換算費を利用する場合でも、その数値が算出された基準を揃えることが重要です。広告換算費の算出方法は確立されていますが、メディアの露出面積を考慮するかどうか、などの判断は算出者によって異なります。基準が異なると広告換算費を用いた相対的な評価は難しくなります。

広報・PRの効果測定全般に言えますが、大切なことは数値を適切に用いて分析することです。
広告換算費はその歴史が長い分、データを長く蓄積している企業も多いはずですので、適切に用いて効果測定に役立てましょう。


広告換算費だけじゃない。複数の指標を用いた多角的な効果測定

広告換算費だけでなく、どのような指標であっても、ひとつだけでは本当の意味で広報・PRの効果測定ができるとは言えません。

広報・PR活動による効果をより正確に評価するために、自社が行う広報・PR活動=アクションと、その活動がどれだけ露出されたかを見るアウトプット、露出が経営に与えた影響を測るアウトカム、この3つの指標を組み合わせることで、成果を質と量、両方の側面から可視化していく必要があります。



アクション、アウトプット、アウトカムの3つの指標にわけ、それぞれに質と量、両方の指標を設け、効果測定を行い評価していきましょう。それぞれのポイントごとに評価することで問題点や貢献している点などを明確にすることができ、以降の改善策の立案も行いやすくなります。

参考に、アクション、アウトプット、アウトカムの3つの指標例の一覧を記載します。
例えば、このようにアウトプットの量的指標だけをとっても、広告換算費以外にもリーチ数やSNSの投稿数、インプレッション数、質的評価であればポジティブ記事率や競合比較など、さまざまな指標が存在しています。
現在行っている広報・PR活動の内容や、得たい情報などにより、立てるべき指標を取捨選択していくことが大切です。

広報・PR活動の効果測定における代表的な指標である広告換算費ですが、それだけでは広報・PR活動を正しく評価することはできません。
効果を算出することが難しい広報・PR活動だからこそ、広告換算費など、ひとつの指標に縛られず、多角的な視点から分析し、正当な評価をすることが求められます。

ビルコムが提供する「PR Analyzer®」は、今回ご紹介したさまざまな指標の分析を自動で行い、御社の広報・PR活動の効果測定をサポートします。正しい評価を得るために、ぜひPR Analyzer®の導入を検討されてみませんか?マーケティング・広報ご担当者向けに無料セミナーも開催していますので、ぜひご活用ください。


記事監修者

ビルコム株式会社
代表取締役兼CEO 太田 滋

2003年にビルコム株式会社を創業。市場創造と評判形成に貢献する次世代PRを掲げ、マスメディアのみならずWebやSNSを含めた統合的なコミュニケーション戦略を手掛ける。
2009年には、クチコミマーケティングの健全なる育成・啓発を支援するWOMマーケティング協議会を立ち上げ初代理事長を務めるなど、業界の発展に貢献している。